サンタが町にやって来る


Original Song:「サンタが町にやって来る」by ジャクソン5
Writer:李仁古


「お母さん。サンタっているの?」
 息子は思い切って母に聞いてみた。すると母は満面の笑顔で答えた。
「もちろんよ」
「でもテレビでいないって言ってた」
 息子はテレビを指さしながら言った。それでも母は笑顔のまま答えた。
「いい? そんな事言ってたらプレゼントもらえませよ?」
「えっ!? ヤダよ! ちゃんとサンタにおもちゃを下さいってお願いしたもん」
 息子の目にはもう涙が浮かび、今にも流れそうになってた。母は膝まづき、息子と同じ目線で言った。
「泣いてはダメよ?」
「どうして?」
「ふふっ。それはね、サンタさんがやって来るからよ」
 母は優しく手で息子の目にたまった涙を拭って、頭をなでた。
「サンタさんはね。リストを作っているの」
「なんの?」
「それはね? パジャマに着替えてベッドに入ってからね」
「うん! 分かった!」
 息子はそう言うと急いで階段を駆け上がった。母はそれを見送ると、唐突に玄関のドアが開いた。玄関には頭に雪を乗せた父が両手で綺麗に包装された箱を持っている。
「いま大丈夫?」
 小声で言う父に母は頷いた。
「ふぅ。外は凄い雪だよ」
「みたいね」
 すると母は口を抑えながら含み笑いをした。父は不思議に思いながら靴を脱いでリビングに向かった。
「お母さーん! 準備できたー!」
 息子の声に父は焦ったが、母は笑みを浮かべて二階に向かった。息子の部屋に入ると、綺麗に布団にくるまった息子が目を輝かしながらいる。
「ねぇねぇ。続き」
「そうね」
 母はベッドの横に座ってから話し出した。
「サンタさんはリストを作っているの。そこには世界中の子供たちの名前が書いてあって、今年一年いい子でいたかチェックするの」
「うんうん!」
「でもそのチェックは二回もして、いい子か悪い子かを分けるの。寝ている時も起きてる時もサンタさんはみんな知ってるのよ?」
「へぇー。サンタって凄いね!」
「そうよ。だからいい子にしてるのよ? これからもずっと」
「うん! 約束する!」
 そう言うと息子は小指を出した。母も小指を出し、息子のと絡める。
 母は笑みを浮かべながら息子の頭を優しくなでる。
「そろそろ寝なさい。サンタさんは必ず来てプレゼントを置いていくわ」
「分かった!」
 そう言うと目を閉じると、あっという間に眠りについてしまった。そこに父が部屋に入り、息子の寝顔を見た。
「寝たのか?」
「えぇ」
 二人で息子の寝顔を見ながら箱をそっと勉強に使う机に置いた。メリークリスマスと書いた紙を添えて。


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